もう10年以上も前に、運動は20分以上続けると効果があがるという理論が発表されました。その理論は、血液中のブドウ糖と脂肪酸の濃度を測定すると、運動当初はブドウ糖濃度が高く、20分ほど経過して、血液中のブドウ糖が消費されると、脂肪の濃度が高くなってくることから導き出されました。
ところが、この理論が日本中に普及した結果、運動不足になる人が増加しました。理由は、20分も運動をしなければならないのなら、負担だと感じる人が多かったからです。
この理論には、2つの説明不足がありました。1つは、運動は10分でも20分でも良いのですが、20分以上、続けると、わずかですが効率的があがると説明すべきだったことです。
もう1つは、ダイエット中のように、いつも血液中に脂肪が溶け出している状態では、運動当初から脂肪の燃焼が期待できることです。
先の実験では、血液中のブドウ糖濃度が20分ほどで少なくなり、代わりに脂肪酸の濃度が増しましたが、これは、普通、血液中に溶け込んでいるブドウ糖の量が20g位なので当然なのです。
ブドウ糖20gはジョギングで、筋肉がちょうど20分で消費する量です。ところが、もしも、食後にジョギングをすれば、食後1時間位はブドウ糖が小腸から吸収され続けるので、いつまでたっても、脂肪の燃焼が始まりません。そのようなグラフも残っています。
また、逆に、ダイエット中や空腹時のジョギングでは、最初から血液中に脂肪が溶け出しているので、ジョギング開始と同時に脂肪が燃え始めるのです。20分も待つ必要はないのです。
筋肉はエネルギーとして脂肪とブドウ糖を燃やします。筋肉は普段は、主に脂肪を燃やして作業し、パワーを出すときにだけブドウ糖(グリコーゲン)を燃やします。ここまで、お話してきたことは、筋肉のエネルギーに関してのことです。
( 中略 )
顔にマスクをしてジョギングをしているシーンをテレビで見たことがあるでしょうか? 顔にマスクをつけて、運動中の吸気と呼気を計測すると、体内でエネルギーがどのように燃えているかが測定できます。たとえば、ジョギングをすると、ジョギング中は筋肉が安静時の7倍のエネルギーを使い、ジョギングを停止すると、安静時の1.2倍程度のエネルギー消費になり、そのまま30分ほど安静にしていると、元の安静時のエネルギーに戻ります。
ジョギング中に筋肉が7倍のエネルギーを使うのはわかりますね? この筋肉のエネルギー消費が7倍になることを代謝亢進率が7と言います。
ジョギングを止めた直後は、エネルギー消費がやや高い時期が続きます。この消費がやや高い状態のことを代謝の亢進と呼びます。運動直後に起こる代謝の亢進時間は人によって違いますが、30分から時には2時間も続く人がいることが報告されています。
この亢進は、主に筋肉の修復やエネルギーの回復のために起こっているもので、この期間に脂肪が燃焼しているわけではありません。
( 中略 )
あえて言えば、運動による直接の脂肪の燃焼は、運動を停止すれば、ただちにストップすると考えてよいと思います。
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